入居者がいるアパート・マンション・店舗でも、収益物件として売却を検討できます。退去してもらうことを前提にせず、賃貸借契約、家賃の入金、敷金、修繕、管理契約を整理し、買主が引き継ぐ内容を説明できる状態にすることが先です。

最初に結論:入居中だから売れないわけではない
入居者がいる物件は、一般に賃貸経営を引き継ぐ買主へ売却する方法を検討します。買主が見るのは建物だけではありません。現在の賃料、契約条件、入金状況、修繕履歴、管理方法、今後の支出を含めた経営の状態です。
売却相談前にそろえる七つの資料
- 部屋別の賃料、共益費、入居状況が分かるレントロール
- 賃貸借契約書、更新・覚書、保証会社の資料
- 敷金、保証金、預り金の一覧
- 直近の家賃入金と滞納状況
- 修繕・設備交換・点検の履歴と領収書
- 管理委託契約、サブリース契約、清掃・保守契約
- 借入残高、返済予定、担保関係が分かる資料
資料が足りない場合は、管理会社、税理士、金融機関、保険会社など、どこから取得するかを一覧にします。書類のそろい方そのものが、買主の確認時間と条件交渉に影響します。
レントロールは家賃の合計だけでは足りない
同じ月額収入でも、契約開始時期、更新条件、フリーレント、駐車場、共益費、保証会社、入金の遅れによって見え方が変わります。部屋ごとに契約書と数字を突き合わせます。
- 契約書上の賃料と実際の入金額が一致しているか
- 口頭だけの条件や特約が残っていないか
- 空室予定、退去連絡、更新時期があるか
- オーナー負担の水道光熱費や設備があるか
- 滞納や分割払いがある場合、経緯と現在地を説明できるか
修繕履歴と今後の工事を分ける
実施済みの修繕は、工事時期、箇所、金額、施工会社、保証の有無を記録します。これから必要になりそうな工事は、確定した発注と検討中の見積りを分けます。
「大規模修繕はいくら」「築○年なら売るべき」と一律には決められません。建物の規模、構造、劣化、工事範囲、足場、設備で金額が変わるため、見積書の内容を同じ条件で比べます。
管理会社・サブリース契約を確認する
売却後に管理契約を続けるのか、終了できるのか、通知期限や違約金があるのかを契約書で確認します。サブリースなどの特定賃貸借契約がある場合は、契約内容と引継ぎ条件を個別に確認します。
国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルのQ&Aでも、オーナーチェンジで特定賃貸借契約が承継される場合の新しい賃貸人への書類交付について案内されています。自分の物件にどう当てはまるかは、契約書を基に管理会社や専門家へ確認してください。
仲介売却と買取を同じ査定額で比べない
| 確認項目 | 仲介での売却 | 直接買取 |
|---|---|---|
| 金額 | 売出価格と成約見込みを分ける | 提示価格と条件を確認する |
| 期間 | 募集・交渉・融資審査の期間を見る | 調査・契約・決済までの日程を見る |
| 手取り | 仲介手数料、測量、修繕等を確認する | 費用、残置物、修繕条件を確認する |
| 引渡条件 | 買主との交渉内容による | 契約不適合責任等の条件を確認する |
査定額が高いか低いかだけでなく、前提賃料、空室、修繕、売却期間、費用を差し引いた手取りを同じ表で比較します。収益物件の査定価格を比較する順番も参考にしてください。
入居者への案内は自己判断で先走らない
売却を検討しているだけの段階で、入居者へ退去を求めたり、契約内容と違う案内をしたりしないでください。売買契約、所有権移転、家賃振込先、敷金等の引継ぎに合わせ、必要な通知の時期と内容を管理会社や専門家と確認します。
買主が確認しやすい一冊にまとめる
資料は「物件」「入居者」「収支」「修繕」「管理」「借入」の六つに分けます。最新版の日付を付け、原本と説明用コピーを分けておくと、古い資料が混ざりにくくなります。
国土交通省も、不動産取引では買主や借主が知るべき重要事項の説明を受ける仕組みを案内しています。売主側も、分かっている重要な事実を早い段階から整理し、分からない点を分からないまま記録することが大切です。詳しくは不動産取引に関する国土交通省のお知らせを確認してください。
よくある質問
満室のまま売る方が高くなりますか?
満室という事実だけでは決まりません。現在賃料の水準、契約条件、滞納、今後の修繕、買主が期待する利回りなどを合わせて判断します。無理な条件で満室に見せるより、実際の収支を説明できることが重要です。
滞納者がいても相談できますか?
相談できます。滞納額、期間、保証会社の有無、これまでの対応を資料で整理し、隠さず前提条件に入れます。法的対応の要否は弁護士など適切な専門家へ確認します。
管理会社に売却相談を知られずに査定できますか?
手元の資料で初期整理できる場合はあります。ただし、正確な入居・入金・修繕情報を得るために管理会社の協力が必要になることがあります。いつ、何を確認するかを不動産会社と先に相談してください。
まとめ
入居者がいる収益物件でも売却を検討できます。最初に、レントロールと契約、入金、敷金、修繕、管理、借入を整理し、仲介と買取の条件を同じ表で比べます。入居者対応を先走らず、買主が引き継ぐ情報を説明できる状態を作ることが第一歩です。

